「学び直す大人」について
仕事を続けていく中で、
“学ぶ”という行為の意味が少しずつ変わってきた気がします。
若い頃は、知らないことを覚えるための勉強だった。
今は、積み重ねた経験をどう整理するか、
どう次につなげるかを考える時間になっている。
このシリーズでは、
日々の仕事や講義の中で気づいたことを通して、
“学び直す”という行為を静かに見つめ直しています。
新しいことを始めたい人も、
これまでのやり方を一度見直したい人も。
そんな誰かの考える時間のきっかけになれば嬉しいです。
経験を学びに変える
長く働いていると、「もう学ぶことは一通りやった」と思う瞬間がある。
けれど実際は、仕事の中にまだ整理しきれていない気づきがたくさんある。
学び直しは、新しい知識を増やすことではなく、
これまでの経験をどう扱うかを考えること。
経験は、完成ではなく素材
経験を重ねると、判断が早くなる。
一方で、それが思考の幅を狭めることもある。
「いつもこうしているから」と無意識に選んでしまう場面が増える。
同じことを繰り返しているように見えても、
少し立ち止まって「なぜこのやり方を選んでいるのか」を考えてみる。
その瞬間、慣れで固まっていた思考がほぐれる。
経験は完成品ではなく、何度でも作り直せる素材だ。
違和感を考える帰り道
うまくいかなかった日や、腑に落ちない打合せのあと。
帰りの車の中で、その違和感を頭の中で反芻する。
最近は紙のノートより、タブレットに書くことが多くなった。
思いついたことをその場で残せるのは便利だ。
ただ、便利さの裏で“考える時間”が短くなっている気もする。
少しでも整理したい気持ちに急かされて、
結論を急ぎすぎてしまう。
頭の中でまだ形になっていない考えを、
もう少し泳がせておく余白が必要なのかもしれない。
ChatGPTとの距離感
最近は考えをまとめるとき、ChatGPTに頼ることが多くなった。
早く正確に整理できるのは確かに助かる。
でもその反面、自分で“考えをこねる時間”が減ってきた気もする。
自分で考える前に“答えっぽいもの”が見えてしまうと、
その先を掘る力が鈍る。
便利でありがたい存在だけど、
ときどき“麻薬のようだな”と思うことがある。
使うほどに楽になるが、考える余地が減っていく。
ツールを上手に使いながら、自分の頭でも考え続ける。
その両立が、これからの学びの形になっていく気がする。
おわりに
学びは新しい知識の獲得ではなく、
自分の経験を見直す作業に変わっていく。
それを誰かに教える前に、まず自分の中で整理する。
便利な道具も、思索の時間も、
どちらも上手に使い分けていければいいと思う。

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